1983年に制定された中国商標法ですが、2014年5月1日から、第三回改正法が施行されました。主な改正点は、下記のとおりです。

1 音声商標の保護

商標権の保護客体が拡大され、音声商標が保護されることになりました。それに伴い、国歌及び軍歌と同一又は類似の商標は登録が認められないことも定められました。

2 一出願多区分制度の導入

従来は、一つの商品・役務の区分ごとに出願する必要がありました。今回の改正では、国際的調和の観点から、一出願で複数の商品・役務の区分について商標出願することが可能となり、商標管理の容易化を図ることができることになりました。但し、出願費用等に関しましては、一出願他区分制を利用した場合でも、これまでと変わりません。

3 審査手続の改善

日本の手続とは異なり、従来は、審査段階において、出願人の意見聴取の機会が与えられていませんでした。今回改正では、審査官は、必要に応じて、出願人に説明又は補正を要求することができることが定められました(但し、運用に関しては、まだ未定なところがあります)。。

4 審査期限等の明定

従来、各種手続に長期間を要していましたが、下記手続に関する手続期間が定められました。今後は手続期間の短縮が期待されます。

[主な手続期間]

手続期間の定め
審査期限出願日から9ヵ月
拒絶査定に関する不服請求の決定期限請求日から9ヶ月(3ヶ月の延長可能)
異議議申立の審理期限公告期間満了日から12ヵ月以内(6ヶ月の延長可能)

5  権利保護の強化を目的とする改正

(1)商標権者が賠償を要求する時の使用義務

商標権者が商標権侵害に対する損害賠償請求を行う場合には、その前3年間に自己の登録商標を使用したことを証明しなければ、その請求が認められません。そのため、商標権の取得後において、中国国内で登録商標を使用することが非常に重要になります。また、自己が登録商標を適切に使用していることを示す証拠を、適切に保存、管理等しておく必要があります。

(2)商標権侵害行為の追加

直接には他人の商標権を侵害する行為ではありませんが、他人の商標権を侵害する行為に参与、協力している者の行為(例えば、商標権侵害だと知りながら、商標権の侵害品の保管、運送、郵送、販売場所を提供等する行為)が、商標権侵害する行為となることが定められました。

6 抜駆け出願行為に対する改正

業務提携の準備段階以降、他人の商標が先に使用されたことを知った上で、当該商標を冒認出願する行為が禁止されることが定められました。本規定は、業務提携交渉時における相手方の抜駆け的商標出願を禁止することを目的としていますが、この場合においても、従来から自己の商標を使用しているという証拠を適切に保存、管理等しておくことが重要となります。